問題が起きたとき、ただ「誰のミスか」を探すのではなく、「なぜそれが起きたのか」を深く掘り下げる――これが根本原因分析(RCA)の考え方です。RCAでは、再発を防ぐために本質的な原因を見つけ出す必要があります。今回は、RCAでよく使われる3つの代表的な分析手法「5M分析」「スイスチーズモデル」「フィッシュボーンチャート」の特徴と使い方をご紹介します。
🔧5M分析|5つの視点でミスの背景を見抜く!
✅5M分析の手順と実施例
5Mとは、「Man(人)」「Machine(機械)」「Material(材料)」「Method(方法)」「Measurement(測定)またはManagement(管理)」の5つの視点の頭文字です。これらの要素に沿って原因を分類することで、漏れなく原因を洗い出すことができます。
【事例】製造ラインで不良品が多発
- Man:作業員の経験不足
- Machine:古い装置の故障
- Method:手順書が最新版に更新されていない
- Material:仕入れ先の素材にばらつき
- Management:工程チェックが形骸化していた
このように「どこに問題の根っこがあるか」を網羅的に見つけられるのが5Mの強みです。
📌5M分析のメリットと注意点
メリット:
- 分析の視点が明確なので初心者でも使いやすい
- チームでの議論が活性化しやすい
- 抜け漏れが少ない
注意点:
- 分類にこだわりすぎると、本質が見えにくくなる
- 要素が重複することもあり、柔軟な運用が求められる
5M分析は、特に製造や品質管理の現場で広く活用されていますが、サービス業など他の分野でも応用が可能です。
🔗 参考:American Society for Quality(ASQ) “Root Cause Analysis Tools”
https://asq.org/quality-resources/root-cause-analysis
🧀スイスチーズモデルによるリスク評価|“穴”を通り抜けた時に事故が起きる
🧠スイスチーズモデルの仕組みと活用事例
スイスチーズモデルとは、事故は1つの原因だけで起きるのではなく、複数の防御層(バリア)に空いた「穴」が重なってしまったときに発生する、という考え方です。
【事例】病院での薬剤投与ミス
- チェック体制が甘い(1枚目のチーズの穴)
- 薬剤ラベルの文字が読みにくい(2枚目)
- 夜勤者が疲労していた(3枚目)
これらの防御層の「穴」が偶然にも一直線に並ぶと(同時に起きると)、事故が発生します。
🔎防御層の穴を見つけてリスクを削減
スイスチーズモデルの本質は、「完璧な防御体制は存在しない」という前提に立ち、多層的な防御策を構築することにあります。
たとえば、製造業での不良品防止には、
- 作業者のチェック
- 自動検査機の導入
- 出荷前の最終確認
1つのエラーが起きても事故にならない設計が、リスク削減のカギになります。
🔗 参考:James Reason “Human error: models and management” BMJ, 2000
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1117770/
🐟フィッシュボーン(魚の骨)チャート|アイデアを“構造化”して見える化!
✍️フィッシュボーンチャートの書き方
フィッシュボーンチャートは、「特性要因図」とも呼ばれ、問題(魚の頭)に対して、各カテゴリの原因を骨のように放射状に並べて可視化する手法です。
【書き方のステップ】
- 問題(たとえば「納期遅延」)を右端に記載
- 大カテゴリ(人、機械、方法、材料、環境など)を主骨に
- それぞれのカテゴリに小さな原因要素を「小骨」として追加
- 原因ごとに「なぜ?」を繰り返し深堀り
このチャートは直感的でビジュアルに優れており、ホワイトボードやオンラインツール(例:Miro、Lucidchart)でも簡単に作成できます。
💬チームでのブレインストーミング活用法
フィッシュボーンチャートは、ブレインストーミングに最適なツールです。チーム全員の意見を出し合って完成させるのがポイント。
【活用ポイント】
- 書記役を立ててテンポよく意見を書き出す
- 意見に優劣をつけず、まずは「見える化」することを優先
- 意見を否定しない(ブレストの基本!)
- 最後に「投票」や「5 Why分析」で根本原因を絞り込む
このプロセスが、全員参加の“気づきの場”になります。
🔗 参考:The Joint Commission – Root Cause Tools Guide
https://www.jointcommission.org/resources/patient-safety-topics/sentinel-event/root-cause-analysis/
まとめ
5M分析、スイスチーズモデル、フィッシュボーンチャート、これらはそれぞれ違う角度から原因を探る強力なツールです。複雑化する現場の問題に対し、「一つの正解」ではなく「多面的な原因と対策」を見つけるために、組み合わせて使うことが重要です。
✅ 5M分析 → 抜け漏れのない構造化
✅ スイスチーズモデル → 防御層の“穴”を埋める視点
✅ フィッシュボーン → 視覚化とチーム共有に最適
RCAは、「誰が悪いか」ではなく「なぜそうなったのか」を問い直す文化を育てます。小さなヒヤリから大きな事故を防ぐために、まずはこれらの手法を一つ、実際の職場で試してみてください。
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